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毎日新聞の記事と、その情報の取り扱いについて考える
私は、普段はいわゆる「社会面」に類する記事についてはあまり言及しません。
Web には私よりも遥かに豊富な、あるいは遥かに深い見識を持つ方が大勢いらっしゃるので、私が浅薄なことを述べる必要は無いからです。
( もっとも、自分の生活に関係しそうな法改正などについては覚え書きとして自分の思考メモを残すことはあります。 )
さて、本日の毎日新聞東京朝刊に、元厚生労働省事務次官およびご家族の殺傷事件についての記事があったようです。
元次官宅襲撃:事件6時間前にネット書き込み...犯行示唆 - 毎日jp(毎日新聞) ※該当記事は削除済や、元厚生次官宅・連続襲撃:年金テロなのか/官界に卑劣な刃(その1) - 毎日jp(毎日新聞)※記事の該当箇所は削除済にて
吉原靖子さんが刺された事件の約6時間前に、インターネットの「フリー百科事典・ウィキペディア」に犯行を示唆する書き込みがあったことが分かった
といった記述があったとのことで、インターネット上の、特に Wikipedia 上にある情報の取り扱い方について考えました。
殺傷事件の被害に遭われた方、また近親者の方は唐突かつ大きな痛みを被っていることと思われます。
また犯人について、またその動機については現時点ではっきり分かっていないので憶測が憶測を呼んでいる状態であり、警察の捜査が進展することを願うしかありません。
よって、あくまで新聞記事とその情報の取り扱いにのみ焦点を絞りたいと思います。
また、該当記事はそれぞれ全部ないし部分的に削除されており、おわび:「ネットに犯行示唆?」の記事についてというお詫び記事も出ていますが、事実関係が詳細に書かれていないので、削除前の記事を元に考えていきます。
まず、 Wikipedia の情報自体について考えてみました。
メインページを見てみると、ページ中の比較的上段に
ウィキペディアはオープンコンテントの百科事典です。
基本方針に賛同していただけるなら、誰でも記事を編集したり新しく作成したりできます。
詳しくはガイドブックをお読みください
との記述があります。
誰でも記事を編集・作成できるということで、非常に多くの内容、そして様々な視点からの記事が存在します。
しかし、それは翻せば内容の信頼度としては玉石混淆であるとも言えます。
元厚生次官宅・連続襲撃:年金テロなのか/官界に卑劣な刃(その1) - 毎日jp(毎日新聞)でも記事中に
ウィキペディアは百科事典のネット版で、誰でも新しく項目を追加したり、自由に編集できるサイト
とあるため、新聞記事を目にする方も誰でもの記述を見逃さなければ、その情報がどういった性質のものであるかは読み取れると思います。
( もっとも、昨今の地上波テレビ番組で流行している「新聞を読み上げてニュースコーナーにする」というスタイルでは、その部分を飛ばして読み上げてしまうことも考えられますが。 )
また、記事中では
犯行を示唆する書き込み
という取り扱いのため、書き込みが本当に犯行とリンクしているという書き方ではありません。
( 「犯行を表明する書き込み」であれば「本当に犯人が書いたのか」「書き込みの内容と犯行の内容が一致するか」といった検証を行って記事にすべきですし。
「×は暗殺された人物を表す。」というただし書きがあり、一覧表の中の吉原さんの名前の前に「×」がつけられていた
という記述は解釈が分かれるかもしれませんが、もしこれが本当に事件前の書き込みであるならば「犯人しか知りえない情報」かもしれず、記者の方は犯行を示唆するものである、という判断に至ったのでしょう。 )
新聞記事に限った話ではなく、 weblog などでも Wikipedia の情報をもとに考察をする場合は自身で記述の正確性・信頼性を検証する必要があると思います。
例えば私の場合は衆議院議員総選挙、有権者として知っておきたい基礎知識で満年齢 - Wikipedia の解説にリンクしてある種丸投げしていますが、記事中に大きな誤りは見受けられないと思ったのでそのようにリンクしています。
ここで、新聞記事の件はひとまず置いて、事件の約 3 時間後に記入された死亡情報の妥当性について考えてみます。
今回の事件に限らず、日本国内の著名人や芸能人などの訃報が流れると、すぐさま誰かの手によって Wikipedia に反映されます。
しばしば
ニュース速報の場所ではありません。
ウィキペディアでは、突発的な出来事の報告をするべきではありません。
ニュースに採り上げられる速報的な話題はしばしば誤っていたり情報不足だったりしますし、またしばしば十分な考察や多面的な視点を欠くものです。
最新の出来事についての速報はウィキニュースの領分です
との注意書きが付記されています。
今回の
犯行を示唆
とされた編集も、事件後であることを鑑みれば「事件によって亡くなられた」という意味で×を付けたという意図が読み取れます。
もしその意図であれば、
現在ニュースの話題になっている事柄に関し、百科事典的な記述として記事を作ることは良いことです
という方向性には反していないとも思えます。
ただし、「暗殺された」という表現が適切かどうか、またそういった表現を性急に書き込んだことについては批判が出る可能性も高いでしょう。
アカウント名をセンセーショナルに報じることの是非
この毎日新聞の報道を受けて、今朝の各ニュース番組でも取り上げられたようです。
東京朝刊では編集者のアカウント名は文中に記載されただけですが、一部地域の紙面では見出しに大きく記載されたとも聞いています。
( そもそも犯行示唆や犯行予告ということ自体が誤報であるため、誤報によってアカウント名が記載された紙面は紹介しません。 )
いわゆるマスコミは「容疑者」段階で犯行事実が確認されていない場合でも、犯人に違いないとして報じることが多いのですが、今回のように「容疑者」ではない段階で、事実の裏を取らずにアカウント名を大々的に報じて良いものでしょうか。
特に多い質問に明記されてありますが、アカウント名の変更はできても、
アカウントは一度作ると削除できません
。
誤報によって、それまでのアカウント名での活動を大きく妨げられることになった利用者に対する責任がどうなるか、今後の動向が気になります。
......と書くと、「実名ではないから支障はないのではないか」という主張をする方が出てきそうですが、それまでにそのアカウント名、あるいは Wikipedia 以外でいうところのハンドルで、一定の実績を積んできていた場合はその実績に大きく影響します。
そしてこれまでの実績が少なくても、今後の活動においてその誤って報じられたアカウント名・ハンドルが一人歩きすることは充分にあり得ます。
実際に、誤って報じられた利用者のアカウント名で検索すると、この事件の関連ニュースが多数ヒットする状態になっています。
私は Wikipedia を編集したこと、これから編集することはありませんが、もしこのハンドルが誤った情報で広がってしまい、 4 年以上使ってきたこの名前を捨てることを考えないといけない、と想像すると他人事ではありません。
要点のまとめ
- 毎日新聞の記事にて、社会保険庁長官 - Wikipedia の記事編集のタイムスタンプが UTC であることに気付かず「犯行示唆」と報道。タイムスタンプが仮に JST であれば事件発生前の編集であるが、実際には UTC のため事件発生後の編集
- タイムスタンプが UTC であることについては比較的たどりやすい位置に説明があり、変更履歴のページ内にも UTC である旨の記述がある
- 書き込みの内容は間違いなく犯行を示唆するとは取れない内容
- Wikipedia は誰でも編集できるため、時刻以外にも内容自体の信頼性には充分な検証が必要
- 更に、ニュース番組で誤報の新聞をそのまま「流し読み」が行われる
- 新聞によっては見出しに大きくアカウント名を記載しているものも
- 該当記事は全部削除、または一部削除
- お詫び記事も出されている。ただし、
書き込みの時刻は事件前ではなく、事件の報道後でした
との記述のみで、そもそも犯行の予告でなかったことの説明や、また誤ってアカウント名を記載した編集者に対する謝罪はなし
なお、【元厚生次官ら連続殺傷】毎日報道「ネットに犯行示唆」は誤報 (1/2ページ) - MSN産経ニュースによると
19日付夕刊でおわびと経緯を掲載する
とのことです。
私はまだそれを確認していません ( 近所のコンビには毎日新聞を取り扱っていませんでした ) が、 Web 上のニュースだけでなく朝刊紙面が誤報のまま宅配されているようですので、きちんとした訂正がなされることを期待しています。
私自身は Web だけでなく紙媒体に文章を残すことがあるため、今回の件は尚更やってはいけない誤り ( と、事後対応のまずさ ) と捉えました。
最後に付記しますが、編集をなされた本人の会話ページを見ると、本人からも事件後の書き込みであることを表明されてあります。
また、地元警察への謝罪と連絡をした旨も書かれてありますが、この「謝罪と連絡」は編集をした方ではなく、別の方が行ってしかるべきだと思います。
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