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パチンコ店の類って、一律にスプリンクラーの設置義務があるわけじゃないんですね
大阪市此花区四貫島のパチンコ店 cross ニコニコの火災のニュースを今朝目にしたのですが、その時私が気になったのが、当該店舗にはスプリンクラーが設置されていなかった、ということでした。 その時は出勤前ということもありテレビからの情報だけでしたので、「スプリンクラーの設置が義務付けられていなかったの ? 放火だとしたら許し難い犯罪だし、店側も出火自体は防げなかったとは思うけど、スプリンクラーを設置していれば大きな被害は出なかったはずなのに」と思ったのですが、ニュースではその後「この店舗はスプリンクラーの設置が義務付けられる規模ではなかった」と述べていました。
設置が義務付けられていなかったにしても、不特定多数の人間が出入りする施設ならば一律に設置しておいても悪いことはないと思うので、「じゃあ、どの規模から義務付けられるのか ? 」という点を調べてみました。
パチンコ店の類は特定防火対象物 ( 遊技場 ) に該当
今回は全て Web のリソースからあたったわけではないので途中経過を省きますが、まず防火対策や消防用設備等に対する規定については、学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものに該当するかどうか、また該当する場合はどの項に該当するかを調べる必要があります。
具体的な防火対象物の区分については消防法施行令 別表第一に定められており、パチンコ店は(二)項ハの遊技場に該当するようです。 (二)項ハはいわゆる「特定防火対象物」にあたり、また cross ニコニコは雑居ビル (= 複合用途防火対象物 ) 内に位置するパチンコ店ということで、複合用途防火対象物のうちの(十六)項イ、いわゆる特定複合用途防火対象物に該当することになります。
スプリンクラー設備の設置基準
建物の区分が分かったところで、スプリンクラーの設置基準です。
消防法施行令 第十二条 十号に
別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物(第三号に掲げるものを除く。)で、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分(総務省令で定める部分を除く。)の床面積の合計が三千平方メートル以上のものの階のうち、当該部分が存する階
について
スプリンクラー設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする
とされています。
条文はすごく回りくどい言い方で書いてあるので、今回のパチンコ店が入居しているビルに置き換えると「当該パチンコ店を含み複数の用途のフロアが存在する建物で、パチンコ店等の特定防火対象物に該当する部分の床面積の合計が 3,000㎡ であれば、その特定防火対象物該当部分の階」にスプリンクラーを設置する義務が生じる、ということです。
放火のパチンコ店ビル、スプリンクラー設置義務なしという記事では、
スプリンクラーの設置義務は延べ床面積が3000平方メートル以上の建物が対象で、今回火災のあったビルは2384平方メートルで基準対象外だった。
と示されています。
この書き方だと、どの建物においても延べ床面積が 3,000㎡ 以上でなければスプリンクラーの設置義務が無いように取れますが、消防法施行令 第十二条ではそれ以外の設置基準も設けており、記事の記述は「パチンコ店の場合は」という点が言葉足らずだと思いました。
( また、「ビルは2384平方メートル」という書き方からは、ビル全体の延べ床面積なのかパチンコ店部分の床面積なのか分かりません。 )
設置基準は延べ床面積だけには限られませんし、また延べ床面積が基準の場合でも、例えば消防法施行令 別表第一(六)項ロに該当する建物では
延べ面積が二百七十五平方メートル以上のもののうち、火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するもの以外のもの
のように、より小さな延べ床面積が基準となっている建物もあります。
パチンコ店の類、というか特定防火対象物は述べ床面積に関わらずスプリンクラー設備の設置を義務付けるべきでは
今回の事件が起こった店舗では、スプリンクラーの設置自体は設置基準から外れていたものの、「設置する必要はない」というだけであって「設置してはならない」ということではないため、「もしこの店舗にスプリンクラー設備が備わっていたら」と残念でなりません。 Web 上でのリソースが見当たらなかったのですが、スプリンクラー設備が備わっている建物における、火災時の奏功率は 98% に近いと聞いたことがあります。
3分後に火柱 燃えやすいパチンコ台が連鎖延焼かという記事でも
パチンコメーカー約30社が加盟する日本遊技機工業組合(東京)によると、パチンコ台の素材はプラスチックと木類が約6割を占め、燃えやすい
とありますし、またパチンコ店の内部は機械が発する音が非常にうるさく、警報や店員の誘導の声も聞こえにくいのではと推測します。
今回の事件によって消防法の改正の動きが出るか分かりませんが、不特定多数の人間が集まる場所は設置の基準に囚われず、一律に設置するような流れになって欲しいと個人的に思いました。 ( ちなみに、日本では先日設置が義務付けられた住宅用火災警報器ですが、アメリカでは煙感知器の全住宅への設置は既に通った道で、住宅用スプリンクラーの普及を図る段階に入っているそうです。 )
放火は防げないからこそ
パチンコ店の放火防止、緊急自主点検を指示という記事で、この事件を受けて
総務省消防庁は6日、パチンコ店に放火防止策の緊急自主点検を指示するよう、全国の消防本部に文書で要請した。
要請では、店内で死角となる倉庫やトイレ、階段などの燃えやすい荷物の整理や、巡回強化、監視カメラ増設を呼び掛けた。
という動きが出ていますが、これらの対策は放火の抑止には効果がありこそすれ「完全な防止」には至りません。
平成20年版 消防白書の第1章 災害の現況と課題(1)「放火」による火災が11年連続して第1位によると、出火原因として放火がトップになっており、また「放火の疑い」も含めるとダントツの割合となっています。 多くの人的その他のリソースを投入すれば、放火の防止率を限りなく高めることはできるかもしれませんが、それでも 100% の防止は不可能でしょう。
第1章 災害の現況と課題(3)消防用設備等の設置の現況では、 2008 年 3 月 31 日現在の設置状況として、遊戯場等の設置必要数を 665 、特定複合用途防火対象物を 8,552 としており、設置率は両方とも 99% 超としています。
しかし、業界ニュース - 全日遊連の店舗数調査、減少は25ヶ月連続にというパチンコ業界の 2009 年 3 月のニュース記事では
2月末現在の全日遊連加盟店舗数は前月末比43店舗減の1万1852店舗
と、前述の「遊技場等」および「特定複合用途防火対象物」が全てパチンコ店であると仮定しても ( 基準とする現在日が 1 年違うとはいえ ) 全店舗数には及びません。
「遊技場等」はともかく「特定複合用途防火対象物」というのはパチンコ店に限ったものではない可能性が高いため、全国のパチンコ店でスプリンクラーを備えている店舗の率はそう多くないでしょう。 今回の事件を教訓に、発生抑止はもちろんのこと、発生時の被害を未然に最小化するような対策が進むことを願っています。

