クラインガルテンもとやまは「町営住宅」なのか調べてみたら、少し違うようだった

クラインガルテンもとやまは「町営住宅」なのか調べてみたら、少し違うようだった

記事内目次

  1. 先に答えを言ってしまうと、クラインガルテンもとやまは「町営住宅」ではなく(地域優良)賃貸住宅
  2. この事案を掘り下げようと思ったきっかけになったtweet群
  3. 本山町の条例・規則および関係法令
    1. クラインガルテンもとやまは「町営住宅」なのか
    2. クラインガルテンもとやまに住民票が置けない?
    3. 本山町の例規集の公開について
  4. もとやま以外のクラインガルテンでの住民票の取り扱い
  5. 3年という入居期限が妥当なのか
    1. 「公営住宅」なら入居期限の定めはなじまない

先に答えを言ってしまうと、クラインガルテンもとやまは「町営住宅」ではなく(地域優良)賃貸住宅

本論部分はものすごく長くなるので、先に概要を書きます。

  • クラインガルテンもとやまは「本山町営住宅」ではなく「本山町(地域優良)賃貸住宅」に該当する。
  • (本山町が法令・条例等を厳密に運用していると仮定して)許容される最高の所得額は月額487,000円以下。
  • イケダハヤト氏が以前「自分が住んでいる町営住宅」等のtweetをしていた(現在は消去)けど、たぶんご本人自身が町営住宅の定義をよく分かっていなかったのではないか。
  • 大部分のクラインガルテンは住民票を置けないようだが、クラインガルテンもとやまは住民票を置けると思われる。
  • クラインガルテンもとやまの管理者は「現在は入居期限は無い」としているが、条例には入居期限の条文が残っているので、改正の不備か条例の理解不足が考えられる。

なぜそういう概要になるかは本山町の条例・規則および関係法令を解説(というより根拠部分をメモしただけですが)したセクション以降をお読みください。

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この事案を掘り下げようと思ったきっかけになったtweet群

そもそもこの事案(話題?)自体は先週くらいから見かけていたのですが、滞在型施設なのか?町営住宅なのか?というあたりを突き詰めてみたいなあと思っていたところに、実際に問い合わせをされた方がいらっしゃったので記録することにしました。

tweetをたくさん埋め込んでいますので、その部分を読みとばして法令・条例・規則の内容を確認したい場合は次のセクションへスキップしてください。

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本山町の条例・規則および関係法令

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クラインガルテンもとやまは「町営住宅」なのか

  • 本山町滞在型市民農園の設置及び管理に関する条例
  • 本山町賃貸住宅の設置及び管理に関する条例
    • 入居者の資格は、もし第4条第1号特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則第26条第1号、第2号及び第3号の規定に該当する)を適用するならば、以下のいずれかの規定が考えられます。
      • 特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律第三条第四号イに掲げる者→所得が中位にある者でその所得が国土交通省令で定める基準に該当するものであって、自ら居住するため住宅を必要とするもののうち、現に同居し、又は同居しようとする親族(婚姻の届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者その他婚姻の予約者を含む。)があるもの
      • 特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則第七条第一号に規定する者→259,000円を超える所得のある者であって、その所得が487,000円以下で都道府県知事等が定める額以下のもの(自ら居住するため住宅を必要とする者のうち、同居親族があるものに限る。)
      • 158,000円に満たない所得のある者のうち、所得の上昇が見込まれるものであって、地域の実情を勘案して賃貸住宅に入居させることが適当であるとして地方公共団体の長が定める基準に該当するもの(自ら居住するため住宅を必要とする者のうち、同居親族があるものに限る。)
    • 第4条第2号は、「災害、不良住宅の撤去その他の特別の事情がある場合」なので、おそらく適用されないでしょう。
    • 第4条第3号は、「同居親族がない入居者の居住の用に供する賃貸住宅」なので、これも適用されません。
    • 第4条第4号の、「災害等特別の事情があり、入居させることが適当と認められる世帯」は地域住宅計画 高知県地域(高知県及び県内全市町村)を参照する必要があります。同計画では「入居者資格として特別な事情があり入居させることが適当と認められる世帯(一般型)として、UJIターン者、若年世帯、災害被災者、密集市街地からの立退者、公営住宅の収入超過者、その他市町村長が特に定住促進対策等として入居が必要と認める世帯」とされており、イケダハヤト氏はUIJターン者と若年世帯に該当すると思われます。なお、第4条第4号には「ただし、所得については、(地域優良賃貸住宅制度)要綱第5条の基準に該当するものとする。」とあり、要綱第5条では「所得が48万7千円以下のもの」と定められています。

本山町営住宅の設置及び管理に関する条例施行規則の別表第1(第3条関係)にもクラインガルテンもとやまの名前がないことから、本山町営住宅ではなく、本山町(地域優良)賃貸住宅であると考えられます。

また、本山町賃貸住宅の設置及び管理に関する条例 第2条第2号でも、町が地域優良賃貸住宅制度要綱(平成19年国住備第160号。以下「要綱」という。)第2条第9号に基づき建設及び管理する賃貸住宅をいうとあることから、地域優良賃貸住宅制度要綱 第2条第9号に定めがある地域優良賃貸住宅(公共供給型)(※紛らわしいですが、同要綱 第2条第15号に定めがある公営型地域優良賃貸住宅(公共供給型)とは区別されます)と言えるでしょう。

ということは、千葉真奈美さんがされた質問のうち、4.の「所得制限のない町営住宅」という点は、本山町からは「町営住宅ではありません」あるいは「所得制限はございます」という返しがあるかもしれません。

ちなみに、規則第1号の「所得が中位にある者でその所得が国土交通省令で定める基準」は、158,000円から259,000円の範囲となっています。158,000円未満なら規則第3号(158,000円に満たない所得~)、259,000円を超える場合は規則第2号(259,000円を超える所得~)になります。

地域優良賃貸住宅制度要綱第5条で定める所得は487,000円以下とされていますが、これを扶養親族3人(入居時点では三女さんは産まれていなかったはず)の場合の年間の収入にすると、9,093,340円以下となります。ただし、この計算は給与所得の場合に適用されるものですから、事業所得として申告をされている場合にはあてはまりません。

法人の登記の住所として良いのか、営利活動を行う拠点として良いのか等の問題についてはまた別の話になりますが、町営住宅なのかどうかという話は、「一般的に、低額所得者向けとされる公営住宅」ではないという結論になると思います。

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クラインガルテンもとやまに住民票が置けない?

このセクションでは、「クラインガルテンもとやま」は「住宅」であると解釈して住民票が置けるのではないか、と考察していましたが、農林水産省の見解によると、専ら居住目的で使用されている状態は適正さを欠くおそれがあるとのことです。

千葉真奈美さんに許可をいただいたので、その見解が書かれたメール画像の内容をテキストに起こしました。

情報提供いただきありがとうございました。

クラインガルテンもとやまについて、御意見を踏まえ調べたところ、直ちに違反と言える事実は確認できておりませんが、市民農園整備促進法の認定を受けて整備・運営されている市民農園としては以下の点に疑義があることから、引き続き調査を行い、必要に応じて開設者に助言・指導を行うよう、高知県を管轄する中国四国農政局に指示を行うこととしました。

クラインガルテンの簡易宿泊施設は、市民農園の利用者に貸し付けられる農地に附帯する、農地の保全又は利用上必要な簡素なものに限られるため、簡易宿泊施設の所在地に住民票を移し、これが専ら居住目的で使用されているとすれば適正さを欠くおそれがあること

2 多くの方に利用していただくという市民農園の趣旨から、法令上、農地の貸付けの期間は最大で5年間と決められており(期間満了後の更新は可能)、この農地に附帯する簡易宿泊施設の貸借期間も一般的には農地の貸付期間と一致するものと考える。このため、仮に農地の貸付けの期間がなく特定の方に利用が集中することとなっているとすれば、法令で5年を超えない期間としている趣旨に反するおそれがあること

農林水産省 農村振興局 農村政策部 都市農村交流課 都市農業室

TEL:03-3502-0033

ということで、クラインガルテンもとやまは地域優良賃貸住宅という扱いではありますが、それでも「簡易宿泊施設である」という農林水産省の見解であるため、住民票を移して居住目的で使用することは適正さを欠くおそれがあるとのことです。

ということは、そもそもクラインガルテンの簡易宿泊施設を地域優良賃貸住宅と設定すること自体がどうなのか、という話になりそうですが、地域優良賃貸住宅は国土交通省、市民農園は農林水産省の管轄なので、そのあたりの立ち位置の関係もあるのでしょう。

この事案を追っていくと、時々目にするのが「クラインガルテンもとやまは滞在型市民農園だから、住民票を置けない」という論。最終的には本山町の公式見解が発表されれば解決するとは思いますが、流石に住民票を置く(住所として設定する)ことを制限できるものなのか?と疑問に思っています。

まず、滞在型市民農園の定義は本山町滞在型市民農園の設置及び管理に関する条例 第3条に明記されており、

  • 本山町賃貸住宅「クラインガルテンもとやま」
  • 農園
  • 市民農園の管理運営に必要な施設

という「住宅」「農園」「管理運営施設」の3種で構成されています。 農園には農地法の規定が適用されるでしょうから、「農園に住民票を置くこと」に対して町が制限をかけるというよりは、そもそも法で規制されていると考えられます。

しかし、クラインガルテンもとやまは前のセクションでも書いたように(地域優良)賃貸住宅なので、住宅に対して条例等で住所設定を禁止・制限することは法の優先順位からも考えにくいですし、そもそも本山町滞在型市民農園の設置及び管理に関する条例には明示されていません。

なお住所の定義は民法や地方自治法、住民基本台帳法などで定義されており、解釈が若干異なっています。(参考:住所・住民概念について) 住民票の話ならば住民基本台帳法の範疇になりますが、同法では「居所、現在地は住所としない」とされています。いわゆる「ネットカフェ生活で、住所を定められない」というのはこの解釈が適用されます。

おそらく、「クラインガルテンもとやまに住民票を置けない」という解釈をされている方は、「滞在型市民農園」の「滞在型」という言葉に着目し、またクラインガルテンもとやま施設募集要項の「嶺北地域外に住所を有する方。(※ 現本山町地域おこし協力隊は適用除外)」という項目で「入居後も嶺北地域外が住所でなければいけない」と捉えているのではないかと推測しています。

利用申請書にも「○滞在予定 1ヶ月に___日程度」と記入する欄があるのですが、上限の条件が特にないので「1ヶ月に31日滞在」としても理論上は問題はなさそうです。

このセクションの内容をまとめると、

滞在型市民農園だから、「居住」できない
構成物件は農園だけでなく、「クラインガルテンもとやま」は「住宅」です。
滞在型市民農園だから、「居住」とは言えない
名称こそ滞在型だけど、1ヶ月あたりの滞在日数に上限は定められていません。
「嶺北地域外に住所を有する」とある
募集要項に書いてあることだから、募集に「応募」する時点で嶺北地域外に住所を有するべき、と読み取れます。「移住・定住に向けて意欲のある方を歓迎」ともありますし。

という感じでしょうか。流石に居住移転の自由を侵害してまで「賃貸住宅」に住所を設定することを禁止・制限する意義はないと思います。

ただし、本山町滞在型市民農園の設置及び管理に関する条例 第7条の利用期間が2018年3月31日時点で満了となっているようなので、同条例 第10条によって利用許可が取り消されるという可能性は考えられます。

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本山町の例規集の公開について

はっきりとした日付は分かりませんが、この記事内でもリンク・引用をしていた本山町のWeb上の例規集が見られなくなっていました。 一部の反応では都合の悪い条例を隠した、というようなものもありましたが、これは例規集のシステムの切替によるものだと思われます。

私がこの記事をまとめ出した頃(2018年11月)に見ることができた本山町の例規集は、株式会社クレステックが提供するじょうれいくんを用いていたようです。 例えば、高知市例規集を見ていただくと、以前の本山町の例規集を目にした方なら、同じようなデザイン・レイアウトだと分かるはずです。

対して、2018年12月現在で確認できる本山町例規集は、第一法規株式会社のe-Reikiを用いています。

これらは異なる会社間のシステム移行で、各条例・規則の個別のHTMLページからリダイレクト等を行うのも困難かと思いますので、404 Not Foundになってしまうのも致し方ないと思います(この記事中のリンクは、新しい例規集のURLに書き換えました)。

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もとやま以外のクラインガルテンでの住民票の取り扱い

「クラインガルテン 住民票」で検索すると、確かに住民票は置けない、移せないとする結果が多く見受けられます。

長野県御代田町や山口県周南市のクラインガルテンでは住民票を移すことはできないとされています。ここをもう少し掘り下げたいのですが、「御代田町滞在型農園施設設置及び管理に関する条例」はWEB上にないようですし、周南市の方の周南市鹿野地域資源活用総合交流促進施設条例周南市豊鹿里パーク「滞在型体験農園及び体験農園」利用要綱には特に記載がありません。

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3年という入居期限が妥当なのか

tweet群の中で引用したtweetですが、

の中に貼られていた画像に、「当初、3年ということで募集したようですが、クラインガルテンは町営住宅であり、そのような期限は法的に認められないという話になり、現在、期限はありません」という表現があります。

この発言をされた方は町職員ではなく、あくまでクラインガルテンもとやまのTwitterアカウントの管理者であるようですが、法令解釈に誤解があるように思えます。

クラインガルテンもとやまは町営住宅
既に述べたように、「本山町営住宅」ではなく「本山町(地域優良)賃貸住宅」です。
そのような期限は法的に認められない
精読していませんが、公営住宅法、借地借家法、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律などには抵触していないと思われます。
「法的に認められない」が正しいのならば、条例が法と矛盾する
本山町滞在型市民農園の設置及び管理に関する条例 第7条で利用期間を定めており、もし「期限を定めることが法的に認められない」のであれば、条例が法に違反している状態になるので、速やかに条例を改正する必要があります。

推測ですが、クラインガルテンもとやまは制度的には定期借家に近いものとして扱われるものと思われますので、3年という期限は条例に沿って、契約書の中で取り決めを交わせば法的には問題ないはずです。

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「公営住宅」なら入居期限の定めはなじまない

逆に、クラインガルテンもとやまが仮に公営住宅法 第2条第2号で規定する)公営住宅であるなら、として考えてみます。

国土交通省のサイト内に、2003年という少し古いものですが公営住宅管理に関する研究会報告書という資料があります。

この資料の10ページに、次のような記述が見られました。

また、公営住宅と定期借家制度(借地借家法第38条)との関係については、

「公営住宅(公営住宅法(昭和26年法律第193号)第2条第2号に規定する公営住宅をいう。以下同じ。)については、同法及びこれに基づく条例に特別の定めがない限り、原則として借地借家法が適用されることが判例上確立しているところである。

しかしながら、公営住宅は、住宅に困窮する低額所得者のために賃貸する住宅であり、入居者が高額所得者となること等特段の事由がない限り居住が継続することを前提として制度が成り立っていることから、事業主体(公営住宅法第2条第16号に規定する事業主体をいう。)は、入居者との間で期間の定めがない賃貸借契約を締結しており、定期借家制度にはなじまないと認識している。」(平成12年2月4日閣議決定(内閣衆質146第20号)、定期借家権に係る質問主意書に対する政府答弁書)

とされている。

なるほど、確かにクラインガルテンもとやまを公営住宅であると解釈すれば、「(公営住宅)法的には認められない」という話につながることも考えられます。

しかし、この場合の公営住宅は地方公共団体が、建設、買取り又は借上げを行い、低額所得者に賃貸し、又は転貸するための住宅及びその附帯施設で、この法律の規定による国の補助に係るものですので、ただ単に地方公共団体(本山町)が建設しているだけでは当てはまりません。

先に引用した政府答弁書の中でも公営住宅は、住宅に困窮する低額所得者のために賃貸する住宅であり、入居者が高額所得者となること等特段の事由がない限りと書かれているため、先のセクションで書いた「「一般的に、低額所得者向けとされる公営住宅」ではない」はずのクラインガルテンもとやまは、条例で期限を明記している以上は定期借家ではないかと考えています。

そうすると、現時点で考えられる可能性として、

  • 本山町の職員が条例の解釈を誤り、クラインガルテンもとやまを(公営住宅法上の)公営住宅と本気で認識している
  • 実はクラインガルテンもとやまは(公営住宅法上の)公営住宅へ運用上は転換しているが、本山町の関係条例の改正を怠っている
  • 本山町の職員は、クラインガルテンもとやまは(公営住宅法上の)公営住宅と解釈できないことは分かっているが、既に条例上の利用期間を過ぎても居住されている現状を是正し難い理由、例えば

    があり、公営住宅という説明を行っている

  • 実は賃貸人及び賃借人双方が合意して再契約を結んでおり、期間満了後も居住できる手続きを取っている(これが一番の落とし所かなと。ただし、条例上の規定と矛盾しますが。)

あたりかなあ、と推測しています。

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