「平成30年分 給与所得者の配偶者控除等申告書」は確かに複雑になっているけど、「12月だけ10万円前後も手取り所得が減る人」ってそんなにいるのか?

「平成30年分 給与所得者の配偶者控除等申告書」は確かに複雑になっているけど、「12月だけ10万円前後も手取り所得が減る人」ってそんなにいるのか?

記事内目次

  1. 配偶者控除等申告書の記入方法が複雑になっている
  2. 「12月の手取り所得が10万円前後減る人」とは?
  3. 配偶者特別控除は拡大されている

配偶者控除等申告書の記入方法が複雑になっている

東洋経済ONLINEに、配偶者控除等申告書の事について書かれた記事が公開されました。

記事の概要を抜粋すると、次のような感じになります(記述を簡潔にするため、本文中にない用語に置き換えていたり、表現を変更していたりする部分があります)。

  • 2018年より、給与所得者の配偶者控除等申告書の記入方法が複雑になっている
  • 2017年以前の配偶者控除は納税者本人の所得に関係なく、控除対象配偶者には配偶者控除が与えられていた
    • 控除対象配偶者を届け出ていれば、書類に記入する情報は少なかった
  • 2018年からは、納税者本人の所得が一定以上の場合は配偶者控除が適用されない
    • 配偶者控除と配偶者特別控除の適用は、納税者本人と配偶者の所得の両方の把握が必要となった
  • 2018年から配偶者控除の適用除外となる人で、前年同様配偶者控除を適用する前提で給与を受け取っていた場合は、12月の年末調整で手取り額が目減りする
  • 配偶者控除を所得控除ではなく税額控除扱いにすれば、税負担がどれだけ軽減されるか分かりやすくなる

確かに配偶者控除等申告書の記入方法は複雑になっていますし、私自身も複雑な計算を補助するために、Googleスプレッドシートで控除額を自動計算する記事を書きました。

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しかし東洋経済ONLINEの当該記事は、間違った内容を書いているわけではありませんが、少しミスリードが含まれる文章になっているのでは?と思いました。

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「12月の手取り所得が10万円前後減る人」とは?

繰り返しますが、東洋経済ONLINEの当該記事は間違ったことは書いていませんし、給与所得者の配偶者控除等申告書の記入方法が複雑化していることも事実です。

当該記事には次のような表現があります。

書類を提出したはいいが、その結果として、いきなり12月の給与で調整されて、12月だけ10万円前後も手取り所得が減る人が出てくる可能性まであるのだ。

2017年までは配偶者控除が適用されていたが、2018年から適用されないことになった人は、激変となる。11月まで払ってきた手取りの給与は、配偶者控除が適用されることを前提にして、所得税を天引きした後にもらっていたのだ。だから、12月の給与では、配偶者控除が適用されないことを前提に所得税を計算し直し、これまで天引きし損ねていた所得税、額にして10万円以上が追加されて天引きされることになる。

納税者本人・配偶者ともに前年の収入がほぼ同じで、税制改正によってのみそのような「激変」にさらされる人=「12月の手取り所得が10万円前後減る人」って?

実際にそのような状況になる人というのは、「納税者本人の所得が1,000万円(給与収入のみの場合、収入金額が1,220万円)を超えかつ配偶者の所得が38万円(給与収入のみの場合、収入金額が103万円)以下」の場合です。

2017年における納税者本人と配偶者の所得金額・控除の関係
配偶者の所得金額→
↓本人の所得金額
380,000円以下 380,001円~759,999円 760,000円以上
10,000,000円以下 配偶者控除 配偶者特別控除 控除なし
10,000,000円超 配偶者控除 控除なし 控除なし

この表のように、2017年までは配偶者の所得金額が38万円以下であれば、納税者本人の所得金額にかかわらず配偶者控除が適用されていました。

ただし、配偶者特別控除(配偶者の所得金額が380,001円~759,999円)は、納税者本人の所得金額が1,000万円以下でなければ適用されませんでした。

本人が1,000万円超の所得があり、配偶者も38万円超の所得があっていた場合は、2017年も2018年も控除の適用はなく、今回の記事の「激変」には当てはまりません。実際に「激変」となる人はそう多くないのではないでしょうか。

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配偶者特別控除は拡大されている

再び当該記事から引用します。

配偶者控除と配偶者特別控除の適否については、納税者本人の所得だけでなく、配偶者の所得も両方ともより細かく把握しなければ、控除額がいくら適用できるか、計算できない羽目になったのである。だから、冒頭で指摘したように、配偶者控除等申告書は、記入箇所が多岐にわたり複雑になってしまった。

当該記事は配偶者特別控除の制度自体については触れられていますが、配偶者特別控除は2017年以前も「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」(例:平成29年分で配偶者の所得を記入し、控除額を計算していたことには触れていません。

実務的には、「2017年までは、控除対象配偶者を届け出て配偶者控除の適用を受けていた」人は配偶者の所得の記入も必要になり、そして申告書の記入方法自体が複雑なためにかなりハードルが上がっています。

しかし、「2017年以前も配偶者特別控除の適用を受けていた」人は、配偶者の所得を記入すること自体は変わりません(計算方法は複雑になっていますが)。

なので、今回の税制改正は「配偶者控除と配偶者特別控除の適否は、いずれの場合も納税者本人と配偶者の所得から計算・判定するようになったので所得の記入が必要になり、控除を受けられる配偶者の所得金額帯は拡大された」と捉えれば良いでしょう。

記入方法は【記入例あり】配偶者控除等申告書をスムーズに記入する方法を、記入する前にどれくらいの所得控除があるのかイメージを掴みたい場合は平成30年から適用 ~配偶者控除・配偶者特別控除の改正で変わること~ | 日本FP協会の図(以下にも引用します)を確認するとわかりやすいです。

平成30年分以後の配偶者控除額及び配偶者特別控除額(所得税)

このセクションでも宣伝しますが、計算が面倒くさい!という方には拙作のGoogleスプレッドシートをお使いください。

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また、2017年までの「控除対象配偶者」と、2018年以降の「控除対象配偶者」は定義が変更されています。その辺りは【改正】来年から配偶者が3種類に分かれる 意味をおさえましょうなどの解説ページをご確認ください。

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