前澤友作(yousuck2020)氏のお年玉100万円の他にも贈与を受ける場合、贈与税額の計算は少々複雑になる?

前澤友作(yousuck2020)氏のお年玉100万円の他にも贈与を受ける場合、贈与税額の計算は少々複雑になる?

記事内目次

  1. 前澤友作(@yousuck2020)氏からお年玉100万円をもらい、贈与税のことが気になるあなたへ
  2. そもそも贈与税の対象となるのか、その他前提条件
  3. 贈与税(暦年課税)の速算表
  4. 暦年課税の対象となる贈与税額が110万円以下の場合
  5. 暦年課税の対象となる贈与税額が410万円以下の場合
  6. 暦年課税の対象となる贈与税額が410万円を超える場合
  7. 前澤友作(@yousuck2020)氏からお年玉100万円をもらい、他にも310万円以上もらうあなたへ
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前澤友作(@yousuck2020)氏からお年玉100万円をもらい、贈与税のことが気になるあなたへ

今回は、次のセクションから法的根拠の提示や解説などを長々と書いてしまうhxxk.jpによくあるパターンの記事なので、記事のエッセンスだけ知りたいという場合はこのセクションのみお読みください。

法的根拠や解説はいらないけど、具体的に贈与税額を計算してみたいという方は、Googleスプレッドシートによる速算表を用意しましたので、ご利用ください。

さて、2019年1月5日に前澤友作(@yousuck2020)氏が、僕(前澤氏)個人から100名様に100万円【総額1億円のお年玉】を現金でプレゼントという企画を行いました。

その企画に当選されたあなた、おめでとうございます。

その企画に当選されなかった・そもそも応募しなかったあなた、当選したものとして以下お読み取りください。

前澤氏から100万円をプレゼントされた場合、贈与税が発生するんじゃ?と思ったあなた、そんなあなた向けにこの記事を書いています。

前澤氏からの100万円以外に特に贈与を受けない場合、または受けたとしてもその金額が10万円以下の場合

前澤氏が贈与税のことまで考えて100万円という金額を設定したのかは分かりませんが、この「個人から」「100万円を」「現金でプレゼント」というのは、あなたが2019年12月31日までに他に贈与を受けない、または受けたとしてもその金額が10万円以下であれば、贈与税が発生しないと思われます。

100人の「あなた」それぞれの使い途について、税金は気にせず100万円満額を使うことができます。

前澤氏からの100万円以外にも贈与を受けるが、その金額が310万円以下の場合

あなたが、2019年12月31日までに前澤氏以外からも贈与を受ける場合で、その金額が310万円以下の場合、最大で35万円の贈与税が発生すると思われます。

例えば前澤氏から100万円、母親から310万円の贈与を受けたなら、35万円の贈与税が発生するパターンとなります。

前澤氏からの100万円以外にも贈与を受け、その金額が310万円を超える場合

あなたが、2019年12月31日までに前澤氏以外からも贈与を受ける場合で、その金額が310万円を超える場合、あなたの年齢や前澤氏以外の贈与者との関係性により、贈与税の計算方法が少々複雑になります

複雑かもしれませんが、この税制をしっかりと把握しておかないと、贈与税を過大に支払ってしまったり、逆に過少に申告してしまったりする可能性があります。

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そもそも贈与税の対象となるのか、その他前提条件

これ以降のセクションは、先ほども書いた通り、非常に話が長くなりますがお付き合いください。

そもそも贈与税となるのか

このお年玉企画が話題になった時に、当選した場合は抽選で賞金としてもらうため「贈与」ではなく「一時所得」になる可能性がある(弁護士・公認会計士 黒川康正氏)、法人から贈与を受けた個人の側は贈与税ではなく、一時所得として所得税の対象になるが、今回は前澤社長個人が100万円をプレゼントするので、個人からの贈与になり、個人間の贈与の場合には、贈与税が適用される(公認会計士・税理士 深堀宗敏氏)など解釈が分かれていました。

実際に応募が締め切られた後の動きを見ていると、純粋な抽選というよりは、ある程度恣意的に当選者をピックアップしているように見受けられましたし、「賞金」という扱いでもなさそうでしたので、この記事では前澤氏の100万円のお年玉は贈与税の対象となると仮定して書いています。

ただし、本当に100万円が当選された方は、贈与税の対象となるのか・一時所得となるのかはこの記事だけで判断されるのではなく、税理士などにご相談いただくことをお勧めします。

その他の前提条件

前澤氏の100万円のお年玉、それ以外の贈与に共通する前提条件として、各種の特例を適用しない暦年課税の贈与と仮定しています。

相続時精算課税制度
この記事では、相続時精算課税制度は選択しないこととしています。
夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産や居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合は、基礎控除の110万円とは別に2,000万円の配偶者控除がありますが、その場合も今回の試算には算入しないこととします。
直系尊属から住宅取得等資金や教育資金や結婚・子育て資金の贈与を受けた場合の非課税
直系尊属(父・母・祖父・祖母など)から住宅取得等資金の贈与を受けた場合に、一定の要件を満たす際はそれぞれの非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となりますが、その場合も今回の試算には算入しないこととします。
直系尊属からの贈与では、教育資金の一括贈与結婚・子育て資金の一括贈与なども非課税の特例がありますが、そちらも同様に算入しません。
特定障害者に対する贈与税の非課税
特別障害者を含む特定障害者に対する財産の信託については、6,000万円または3,000万円まで贈与税が非課税となりますが、今回の試算には算入しないこととします。
非課税財産
この記事では、非課税財産は考慮しない(試算の際に算入しない)こととしています。相続税法基本通達 21の3-9では、社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないとありますので、「それ以外の贈与」に香典や見舞金、前澤氏の100万円以外の通常のお年玉などは含めないようにしてください。

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贈与税(暦年課税)の速算表

タックスアンサーのNo.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)に、贈与税の計算に使用するための速算表が公開されています。

しかし、この速算表は一般贈与財産と特例贈与財産に分かれており、基礎控除後の課税価格しか記載されておらず少々分かり辛いところがありますので、今後の説明用に改良したものを掲載します。

速算表

贈与税(暦年課税)の速算表
実際に贈与を受ける金額 基礎控除後の課税価格 [A] 特例税率 [B] 控除額 [C] 一般税率 [B] 控除額 [C]
0円以上 3,100,000円以下 0円以上 2,000,000円以下 10% 控除なし 10% 控除なし
3,100,001円以上 4,100,000円以下 2,000,001円以上 3,000,000円以下 15% 100,000円 15% 100,000円
4,100,001円以上 5,100,000円以下 3,000,001円以上 4,000,000円以下 15% 100,000円 20% 250,000円
5,100,001円以上 7,100,000円以下 4,000,001円以上 6,000,000円以下 20% 300,000円 30% 650,000円
7,100,001円以上 11,100,000円以下 6,000,001円以上 10,000,000円以下 30% 900,000円 40% 1,250,000円
11,100,001円以上 16,100,000円以下 10,000,001円以上 15,000,000円以下 40% 1,900,000円 45% 1,750,000円
16,100,001円以上 31,100,000円以下 15,000,001円以上 30,000,000円以下 45% 2,650,000円 50% 2,500,000円
31,100,001円以上 46,100,000円以下 30,000,001円以上 45,000,000円以下 50% 4,150,000円 55% 4,000,000円
46,100,001円以上 45,000,001円以上 55% 6,400,000円 55% 4,000,000円

押さえておくポイント

次のセクションから詳しく書いていきますが、まずは同じ贈与額でも、特例税率の方が税率は低いし控除額は大きいことと、その区別は基礎控除後の課税価格が300万円~400万円台から始まることを押さえておいてください。

また、「実際に贈与を受ける金額」と「基礎控除後の課税価格」を比べていただければ分かる通り、特例等を用いない場合の暦年課税の贈与税の基礎控除額は110万円という点も押さえておいてください。

贈与税額の計算方法

最後に、贈与税額の計算方法もここで押さえておきましょう。タックスアンサーなどでは、

基礎控除後の課税価格 [A]×税率 [B] - 控除額 [C]

として説明されていますが、後述する一般贈与と特例贈与の混在のケースでは基礎控除前の贈与額の方が理解しやすいので、

(実際に贈与を受ける金額 - 110万円)×税率 [B] - 控除額 [C]

という計算方法であると覚えてください。

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暦年課税の対象となる贈与税額が110万円以下の場合

冒頭のセクションで、「前澤氏からの100万円以外に特に贈与を受けない場合、または受けたとしてもその金額が10万円以下の場合」という例を最初に出しました。

この場合だと、2019年中に受ける贈与が前澤氏からの100万円だけ、またはそれ以外に受ける贈与の金額が10万円ということで、「実際に贈与を受ける金額」は110万円以下となります。

110万円以下の場合は全額基礎控除で相殺されるので、暦年課税の対象となる贈与税額は0円となります。

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暦年課税の対象となる贈与税額が410万円以下の場合

次に、「前澤氏からの100万円以外にも贈与を受けるが、その金額が310万円以下の場合」という例を最初に出しました。

この場合だと、2019年中に受ける贈与が前澤氏からの100万円+それ以外に受ける贈与の金額が310万円以下ということで、「実際に贈与を受ける金額」は410万円以下となります。

このゾーンまでは一般贈与と特例贈与の違いは発生しないので、計算もそんなに難しくありません。

速算表で「実際に贈与を受ける金額」が410万円以下の行は、税率が15%で控除額が10万円とあります。仮に「実際に贈与を受ける金額」がそのゾーンで最大の410万円だとしたら、

(410万円 - 110万円)× 15% - 10万円

という計算となり、暦年課税の対象となる贈与税額は35万円となります。

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暦年課税の対象となる贈与税額が410万円を超える場合

「前澤氏からの100万円以外にも贈与を受け、その金額が310万円を超える場合」からが複雑になってきます。

例えば、2019年中に受ける贈与が前澤氏からの100万円、それ以外に受ける贈与の金額が400万円とすれば、「実際に贈与を受ける金額」は500万円となります。

速算表の4,100,001円以上 5,100,000円以下の行をご覧ください。このゾーンから、一般贈与と特例贈与の違いが発生しており、贈与を受けた相手ごとに一般贈与なのか特例贈与なのか考える必要があります。

特例贈与とは?

ここまで、特例贈与について何も解説していませんでしたが、特例贈与となるケースは次の条件の両方を満たす必要があります。

  • 贈与を受ける「あなた」が、2019年1月1日現在で20歳以上である
  • 「あなた」に贈与する人は、「あなた」の直系尊属である

直系尊属というのは「基本的に実の父・母・祖父・祖母など」と考えてください。配偶者の父・母・祖父・祖母は直系尊属にはあたりません。なお養子縁組をしている場合は養父母は直系尊属にあたりますが、その父・母は直系尊属にはあたりません。

前澤氏には2019年1月1日現在でお子さんがいらっしゃるという情報はありませんので、「あなた」が20歳以上であろうとなかろうと、前澤氏からの100万円のお年玉は特例贈与にはあたらず、一般贈与となります

前澤氏からの100万円以外も一般贈与なら?

このセクションの冒頭では「2019年中に受ける贈与が前澤氏からの100万円、それ以外に受ける贈与の金額が400万円」としました。

後者の400万円も一般贈与であるなら、計算はシンプルに

(100万円 + 400万円 - 110万円)× 20% - 25万円

という計算となり、暦年課税の対象となる贈与税額は53万円となります。速算表の一般税率の方を確認してくださいね。

前澤氏からの100万円と、特例贈与400万円なら?

では、「それ以外に受ける贈与の金額が400万円」の部分が特例贈与としましょう。

例えば、「あなた」が20歳以上で、母親からマイホームの資金でも学業の資金でも結婚の資金でもない「ただ好きに使っていい現金」で400万円をもらった場合です。書いていてうらやましくなってきました。

この場合は「100万円が一般贈与」「400万円が特例贈与」となりますので、タックスアンサーのNo.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)の、「一般贈与財産用」と「特例贈与財産用」の両方の計算が必要な場合の項を確認してください。

  1. 贈与額合計の500万円を、まず「全て一般贈与として」仮の税額を計算する→さっきの計算と同じです。「あなた」の戦闘力……じゃなかった贈与税額は530,000円です。
    • でも実際に一般贈与となる部分は500万円のうち100万円なので、1,000,000 ÷ 5,000,000 = 0.2 という按分率をこの530,000円に掛けます。すると一般贈与部分の贈与税額は106,000円となります。
  2. 次に、贈与額合計の500万円を今度は「全て特例贈与として」仮の税額を計算する→式は省略しますが贈与税額は485,000円となります。
    • こちらも、実際に特例贈与となる部分(500万円のうち400万円)の按分率を求めると、4,000,000 ÷ 5,000,000 = 0.8 となり、485,000 × 0.8 を計算すると特例贈与部分の贈与税額は388,000円となります。
  3. 最後に、106,000 + 388,000 を計算した494,000円が贈与税額の合計となります。タックスアンサーの方でも同じ金額で計算結果が出ています。

なお、冒頭でも紹介したGoogleスプレッドシートによる速算表で検算しても、同じ結果になるはずです。

また、この記事内で作成した速算表の所で書いた「一般贈与と特例贈与の混在のケースでは基礎控除前の贈与額の方が理解しやすい」というのは、タックスアンサーの速算表には基礎控除後の課税価格しかないのですが、この計算を行う場合には混乱の元となりかねません。

実際、私は一般贈与100万円 + 特例贈与400万円の合計額から基礎控除後の課税価格390万円を計算して、どちらの速算表に当てはめればいいか少し悩みました(だから、この記事をまとめたとも言えます)。

ちなみに、暦年課税の場合、基礎控除額は贈与をした人ごとではなく、贈与を受けた人ごとに1年間で110万円となるため、「あなた」が2人以上の人から贈与を受ける場合でも、110万円 × 人数が基礎控除額となるということはないので、これも基礎控除後の課税価格しかない速算表では間違いの元となるかもしれません。

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前澤友作(@yousuck2020)氏からお年玉100万円をもらい、他にも310万円以上もらうあなたへ

ということで予告通り長くなりましたが、前澤友作(@yousuck2020)氏からお年玉100万円をもらい、他にも310万円以上の贈与を受けるであろう「あなた」は、次のような点に注意して、2020年2月~3月の確定申告時期に贈与税の申告を行いましょう。

  • 前澤氏からの100万円以外に贈与をもらう相手が直系尊属だったら、全額を一般税率で贈与税額を計算すると、贈与税額の納めすぎになるかもしれません。
  • 前澤氏からの100万円以外に贈与をもらう相手が直系尊属ではなかったら、全額を特例税率で贈与税額を計算すると、贈与税額の過少申告になるかもしれません。

私は前澤氏のお年玉企画に応募していませんし、それ以外にも贈与を受ける予定はないので、今回まとめた知識を今後何に役立てるべきか悩んでいます。

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