高知市が日付を遡って決裁書類を作り、虚偽公文書作成・同行使とされた件は、何故19人もの書類送検になったのか
- 2019.02.08
- 地方自治
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高知市長と市幹部19人書類送検 日付さかのぼり決裁書作成容疑
2019年2月6日の共同通信配信のニュースで、高知市長と市幹部19人書類送検 日付さかのぼり決裁書作成容疑というものがありました。
高知市が市長の押印などが必要な決裁文書の作成を怠り、日付をさかのぼった書類を作っていた問題で、高知県警は6日までに、虚偽公文書作成・同行使の疑いで岡崎誠也市長と市幹部ら計19人を書類送検した。
送検容疑は16年1月、高知市が14年4月に公表した「都市計画マスタープラン」について市都市計画課が日付を偽って同年3月7日付とした書類を作成し、当時の市幹部らが決裁印を押して提出した疑い。
この書類は「起案紙」と呼ばれるもので、同課がプランの策定過程で作成を怠っていたことが15年末に判明。岡崎市長がプランの最終案を口頭で了承した日付にさかのぼって記載したという。
NHKニュースの高知市長ら19人を書類送検では、もう少し詳しく報道されています。
この問題は、高知市が今後20年の都市計画の基本方針などを定めた「高知市都市計画マスタープラン」の変更に伴う決裁を平成28年1月26日に行ったにもかかわらず、日付けをさかのぼり、平成26年3月7日に公文書を作成していたとして、「市民オンブズマン高知」のメンバーが虚偽公文書作成などの疑いで告発していたものです。
告発を受けて警察が捜査を進めた結果、日付を偽った公文書を高知市議会に提出したなどとして、6日までに、岡崎市長など19人を高知地方検察庁に書類送検していたことがわかりました。
時系列
記事中の日付の書き方だと、文字数の制約から流れが分かり辛いので表形式にまとめ直しました。
時期 | できごと |
---|---|
2014年3月7日 | 岡崎市長が、マスタープランの最終案を口頭で了承したとされる日付 |
2014年4月1日 | 高知市が2014高知市都市計画マスタープランを策定した旨を公表 |
2015年末 | マスタープランの策定過程において、「起案紙」の作成を高知市都市計画課が怠っていたことが判明 |
2016年1月26日 | 高知市都市計画課が「2014年3月7日付」としたマスタープランの変更に伴う決裁書類を作成し、当時の市幹部らが決裁印を押して高地市議会に提出 |
2019年2月6日 | 虚偽公文書作成・同行使の疑いで岡崎誠也市長と市幹部ら計19人を書類送検したとの報道 |
「起案紙」をさかのぼって作ったことが「虚偽公文書作成・同行使の疑い」にあたるのはまあ分かるとしても、19人が書類送検されるとは事が大きいのでは?と思ったら、実は色々と根が深そうです。
道の駅構想が絡んでいる?
調べてみると、ただ単に「正式な起案を取っていませんでした」という問題ではなく、
- 2013年11月に都市計画マスタープランの策定委員会の最終回(第4回)が開催され、続く2014年2月にパブリックコメントが締め切られたもの
- パブリックコメント締め切り後に、高知市都市建設部内の判断で「道の駅構想」に絡む「高台利用」と「防災道路」の内容をプランに盛り込む
- 2015年7月31日に高知新聞で道の駅構想が報道され、多くの人に構想の内容が明らかになる
- 2015年11月1日以降、高知民報で「桂浜「道の駅構想」の怪」という連載記事が開始される
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (1)
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (2)土壇場で書き換えられたマスタープラン
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (3)
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (4)不正常なプラン書き換えが呼び水
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (5)「官民連携調査」、予算流用で
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (6)南国市に飛び火した紛争
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (7)現状回復の方法固まらず
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (8)横矢社長インタビュー 「売っても元とれない」
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (9)遅れこむ仁井田産業団地
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (10)横矢社長 「協力はしたくない」
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (11)保安林解除 ハードル高く
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (12)「道の駅」ヤマ場近づく
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (13)防災道路の幅員は県道並み
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (14)利用された防災
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (15)プラン書き換え 補助金要件に疑義
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (16)順番が逆 住民アンケート
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (17)桂浜整備計画との齟齬
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (18)事業費31億円 公設民営で
- 桂浜「道の駅構想」の怪 (19)年間利用者72万人の虚構
- 高知市議会2015年12月定例会で、「都市計画マスタープランの改ざん問題」として議論される
という流れがあったようです。また、高知市議会2016年9月定例会(9月28日開催分)では、
マスタープラン策定については,長浜地区への高台土地利用を策定委員会に諮ることなく職員が追記,改ざんを行ったことが明るみになる経過の中,決裁文書がなかったことから,意思決定をした決裁日から2年近くも経った本年1月に決裁文書を作成したものです。
本会議で執行部は,市民への陳謝の言葉もなく,本来行うべき決裁が抜かっていたが,文書内容に虚偽はないため文書偽造,虚偽公文書作成には当たらないとの答弁を行いましたが,文書事務の手引に反しているのは明白であり,この問題について法律の専門家は,決裁文書に遡及効はなく,決裁は存在しない。新たな決裁は日付を偽り,過去の時点から有効な決裁があったかのごとく装うもので,虚偽公文書作成罪に,また権限のない者の決裁は公文書偽造に当たるおそれがあると指摘しています。
との討論があっています。
まとめると、「策定委員会やパブリックコメントの後にマスタープランの内容を書き換え、4月1日付でマスタープランを発行したものの、その書き換えに係る決裁の記録が残っておらず、遡及して当時の担当者等の決裁を取った、という行為に対して疑義が持たれた」という事になります。
もっと深く調べたいところではありますが、この背景ならば19人もの書類送検もあり得る話だなと思いました。
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