JAPAN satisfaction guaranteed(旧称:FB良品)の自治体側のコスト・出品者側のコストから費用対効果を考えてみる

JAPAN satisfaction guaranteed(旧称:FB良品)の自治体側のコスト・出品者側のコストから費用対効果を考えてみる

記事内目次

  1. まえおき
  2. 出店者としての費用対効果
  3. 自治体としての費用対効果
  4. 兵庫県多可町
  5. 鹿児島県薩摩川内市
  6. 福岡県大刀洗町
  7. 三重県松阪市
  8. 佐賀県武雄市
  9. おわりに
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まえおき

FB良品という、「地元密着型」をコンセプトにした物産通販サイトがあります(2013年9月4日より、JAPAN satisfaction guaranteedに改称されています)
地域の隠れた銘品を販売したり、小さな単位の生産者さんも商品を出品しやすいという構想は良いものだと思っていますが、費用対効果という視点で見た場合に、まだまだ係る費用に対する効果は出ていないのではという情報を何点か見かけたので、記録しておきます。

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出店者としての費用対効果

まず、実際に出品をする出店者の費用対効果について考えます。

「FB良品みしま」出品商品を募集していますによると、初期費用は無料とありますが、
※売上が発生した際に手数料等がかかります との記載があり、また「FB良品NANTO」出品商品を募集中です。でも売上があれば、カード決済の場合、販売手数料5%、カード決済手数料3.5%+情報処理料1件20円が表示価格にかかりますとされています。

同様に、岐阜県関市埼玉県坂戸市三重県松阪市香川県宇多津町などでもこの手数料について明記されています。

販売スキームとしては、消費者が商品を購入する際には、購入代金をFB良品の運営元である株式会社SIIISに対し支払い、出店者に対しては翌々月に株式会社SIIISから「販売代金から送料・販売手数料5%・カード決済手数料3.5%・情報処理手数料・代金引換サービス手数料・販売代金振込手数料を差し引いた金額」が支払われます。

そのため、出店者が送料や手数料を負担する形で出品するか、または送料や手数料を販売代金に含めて出品するか(直販や自社通販等より割高になる)のどちらかになり、「大手ショッピングサイトに出店するよりはコストは低いが、直販や自社通販よりはコストが高い」という位置付けになるようです。

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自治体としての費用対効果

次に、自治体側の費用対効果について考えます。

出品者ではなく自治体側が負担する費用として、
◆IT経営カンファレンス福岡~武雄市樋渡市長とのであいによると、初期費用200万円(税抜き)毎月の維持管理費15万円(税抜き)が必要との情報があり、また多可町議会 平成24年第48回定例会でも同額のコストが必要と言われています。

FB良品で利益を出すには3,150円・7掛けの商品を年間最低何個売ればよいかざっくり試算してみた #FB良品 pic.twitter.com/JHz9iQMo0p

このような試算をされている方もいましたが、FB良品で商品が売れた場合の売上はそもそも自治体側には入りませんので、黒字・赤字という視点(それ自体はもちろん重要ですが)ではなく「販路拡大による住民の所得向上」が費用に対する効果であると見ることになります。
そのため、完全にペイできなくても、一定の所得向上が見込めれば費用対効果はあると言って良いかと思います。

しかし、実際には所得向上が見込めるのか、それをFB良品の売上ランキングのJSONデータから推測した方がいらっしゃいます。

さて、FB良品売上総合ランキングは過去30日間のデータを基に「月間ランキング」として毎週更新される訳だがそのランキングデータがこちらのJSONで出力されている。(http://t.co/UJ20LKbR2a)(続 #FB良品

続)そしてJSON内の件数を見ると先週が71件、今週が66件であることから売上があった商品全件を取得してきていると推測される。(たぶん100件くらいで制限掛けてるだろうけど届いてない…)つまり8/26時点過去30日のFB良品全体では66商品しか売れていない。(続 #FB良品

続)そして13位の「大山の桃」は限定10個販売だったので14位以下は売上数10個以下、もしくは売上額44,000円以下。たぶん売上数基準と推測されるが。で、参加自治体毎に何アイテム売れたかが次の通り。 続) #FB良品

続)FB良品自治体別過去30日売上商品数予想(8/26)
※売れた商品の数なので複数売上でも1点とカウント
武雄 12
多可 9
那須高原 8
宇多津 7
三島 7
南砺 5
陸前高田 5
石垣 4
上板 2
関 2
薩摩川内 2
大刀洗 2
坂戸 1
燕三条 0
続)#FB良品

JSONデータ自体には販売数や販売金額は記録されていませんが、13位の商品が限定10個の販売数(よって14位以下は10個以下と推測)という結果となり、ほぼ全ての団体で月あたりの販売数は1桁であると推測されています。この数字が事実であれば、地元直販や自社通販に比べて誤差程度のプラスであり、目立った所得向上の材料にはならないと言えます。

9月2日集計のデータも追加で計算されたようです。

FB良品自治体別過去30日売上商品数予想(9/2)
※売れた商品の数なので複数売上でも1点とカウント
多可 11
武雄 10
那須高原 7
宇多津 7
三島 7
南砺 6
陸前高田 3
石垣 3
関 3
大刀洗 3
薩摩川内 2
坂戸 2
上板 0
燕三条 0
#FB良品

あくまでこの数字はデータからの推測なので、実際はもっと上の数字では……と思いましたが、いくつかの団体で売上に関する情報が公開されており、やはり同じくらいの販売数であることが分かりました。

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兵庫県多可町

多可町議会の山口くにまさ議員のトピックスによると、平成25年1月25日の神戸新聞に FB良品TAKAの最初の1ヵ月の売り上げが24人の購買で8万円 との記事があり、またFB良品のスタートアップ団体である佐賀県武雄市の初月の売上が15.8万円であるとも書かれています。

新聞報道では、2013年3月4日付の神戸新聞では特産品通販事業「FB良品」の売り上げが低迷しており、PR費などを計上したともあり、あまり順調なスタートではなかったようです。
また、Web上では新聞記事を確認できませんでしたが、新聞記事をアーカイブしていると思われる方のツイートがありました。

読売新聞2013年4月23日
『フェイスブック 多可特産品通販が苦戦 昨年末開設 売り上げ目標の1/4』
「売り上げは、最初の1か月は24人約8万円だったが、2か月目は5人約1万5000円に減少。4か月目も8人約2万8000円にとどまり、4か月間で計42人約14万2000円。」

神戸新聞2013年5月28日
『多可町の逸品 いいね! 売り込み強化 フェイスブックに通販ページ』
「当初は売り上げが低迷していたが、5月に実施したFB良品限定バスツアーが人気で、開設5カ月目(4月15日~5月14日)は月間で過去最高の約17万5千円を売り上げた。」(続

これらの情報をまとめ、また情報公開請求により開示されたFB良品TAKA 注文状況を参考にすると、売上表は次のようになります。

開設8ヶ月目までのFB良品TAKAの販売人数・売上金額
経過月数 販売人数 販売額
1ヶ月目(2012年12月15日~2013年1月14日) 24人 80,427円
2ヶ月目(2013年1月15日~2013年2月14日) 5人 15,814円
3ヶ月目(2013年2月15日~2013年3月14日) 5人 18,293円
4ヶ月目(2013年3月15日~2013年4月14日) 8人 28,372円
5ヶ月目(2013年4月15日~2013年5月14日) 43人 149,474円(バスツアー権13人 65,000円含む)
6ヶ月目(2013年5月15日~2013年6月14日) 16人 88,393円(バスツアー権12人 60,000円含む)
7ヶ月目(2013年6月15日~2013年7月14日) 24人 181,540円
8ヶ月目(2013年7月15日~2013年8月15日) 34人 103,060円

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鹿児島県薩摩川内市

情報公開請求により開示された売上資料によると、

2012年度のFB良品SATSUMASENDAIの販売件数・売上金額
年度・月 販売件数 販売額
2012年4月 0件 0円
2012年5月 10件 33,900円
2012年6月 3件 11,400円
2012年7月 0件 0円
2012年8月 10件 3,800円
2012年9月 0件 0円
2012年10月 0件 0円
2012年11月 1件 15,400円
2012年12月 9件 37,950円
2013年1月 1件 3,150円
2013年2月 4件 12,300円
2013年3月 22件 87,500円
2012年度合計 51件 205,400円
2013年度(8月13日時点まで)のFB良品SATSUMASENDAIの販売件数・売上金額
年度・月 販売件数 販売額
2013年4月 1件 4,800円
2013年5月 2件 7,600円
2013年6月 4件 16,950円
2013年7月 1件 7,800円
2012年8月 1件 11,000円
2013年度合計 9件 48,150円

と、正直なところかなり低迷しているように見えます。

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福岡県大刀洗町

平成25年2月発行のたちあらい議会だより No.137の12ページに、有機米と水出しコーヒーと農産物詰め合わせの3品目の売上実績について記載があり、開設日の7月22日から12月12日現在で、出荷数が133品、売上げ金額は約42万円と公表されています。

およそ5ヶ月間の実績ですので、月あたり10万円弱といったところでしょうか。
現在のFB良品 大刀洗では品目が増えているので、実績はプラスになっていると良いのですが。

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三重県松阪市

情報公開請求により開示された平成25年10月・11月の販売実績資料によると、10月はピオニッシュ 芍薬消臭抗菌ミスト 100mmが1つ売れたことに留まり、11月の売り上げは全く無かったようです。

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佐賀県武雄市

武雄市の場合は、平成25年9月定例会一般質問議事録(速報版)にある江原 一雄議員の一般質問議事録に、

売り上げにつきましては、基本的に売上額は、出された店舗さんと株式会社SIIISさんと取引ということで、SIIISさんは、売り上げは公表はされておりません。
武雄は便宜上必要に応じてやって、武雄の分については売り上げは聞いてます。昨年度は、あわせて1年間で620万円程度の売り上げがありました。最高は月100万円、平均すると月50万円台の売り上げがあるということです。

加盟自治体の売り上げについては把握しておりません。

という答弁が掲載されていました。
発端となった自治体とはいえ売上が突出しているなあと思ったら、平成25年3月定例会にある平成25年3月12日の本会議議事録に、

今、武雄の産品でやっていますのは、今、来た議員さんたちにFB良品をカタログ化して、これはうちの古賀敬弘さんのアイデアなんですけれども、カタログにして売っているんですよ。
売って、買ったものを後で送りますと。
お名刺いただきますので、お名刺を控えた上で、同意を取った上で、お金をいただいて送っていると。
これが多いとき、月間でも50万円超しているんですね。

という答弁がありました。
多数の行政視察を受け入れている中での販売促進ということで、他の参加団体はこの数字を参考するのは難がありそうです。

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おわりに

まえおきでも書いたとおり、私は構想自体は良いものだと思っています(名称が誤認を招きやすいとか、名称やロゴマークを無印良品およびSB食品のイメージに似せているとか、JAPAN satisfaction guaranteedのロゴがModern Mischiefに酷似しているとか、ほとんどのブラウザで、最初に表示される領域が何のサイトか分からないデザインであるといった点はいかがなものかと思いますが)。

FB良品に参加している自治体へ3点だけアドバイス。のように、ネットショップ運営という視点からのアドバイスも起こっていますし、売上が上昇することを期待しています。

この記事を書いている時点で14の団体(ショップ)があり、これからも加入および開店する団体は増えていくものと想定されます。
加入団体が増えていくに従い、運営に係る収入(初期費用200万円および毎月の維持管理費15万円)も比例して増えていくと思われるので、ある程度の加入数となったら、新規加入団体の初期費用の減額や、既加入団体への初期費用の還元を行うなど、イニシャルコスト・ランニングコストの低減を図り、ゆくゆくは売上に係るコスト(販売手数料・カード決済手数料・情報処理料)の無料化が実現できれば、費用対効果は上昇するのではないかと思います。

あるいは、売上に係るコスト(販売手数料・カード決済手数料・情報処理料)は残したままで全体像の売上増を図り、イニシャルコストを下げていくという方向も考えられるかもしれません。

いずれにせよ、現状のコストは売上に対して大きすぎますので、もし自分の住む自治体が加入することになったとしたら、費用対効果を明確に説明できるような状況になっていればと願っています。

なお、FB良品は費用対効果以外の面でも議論が起こっており、FB良品加入自治体議員の皆さまへ開示文書にみる「F&B良品」と適法性への疑問 #FB良品で取り上げられている内容も、あわせて注視していこうと思います。

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