出張査定業者の訪問を受けたので、注意点をシェア

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大まかな流れと、これだけでもダウンロードしておきましょう的なリンク
いつもあれこれと記事が長くなってしまいがちなのですが、今回の内容は最後まで読まずに冒頭だけ読まれても、最低限伝えたいことだけでも伝えるために箇条書きから始めます。
簡単に書くと、「出張査定業者、来る。」ということで、もし当該業者がいわゆる悪徳事業者だったら「査定からの押し買い」だった案件でした。
ある程度実体験に沿っていますが、当該業者が優良な会社なのか悪徳事業者だったのか判断できるほどのやり取りはなかったので、詳細はボカしたり言い回し等は変えたりしています。
- 「自宅に眠っている贈答品などございませんか?」という電話がかかってくる
- 「贈答品は特に無いけど、使っていない着物などならある」と答える
- 「よろしければそのお着物を査定させてください。〇月〇日の〇時に伺います」というアポイントメントを取る
- 「……ということが先日あったんだけど」という話を、お盆時期ということもあってたまたま顔を出していた私に相談というか報告をされる
- 本音としては「やっぱり来てもらうこと自体を断って」と言いたかったけど、(時期もあって?)電話がつながらないとのこと
- 「〇月〇日の〇時」に必ず顔を出して付き添えるか確約できなかったので、消費者庁 – 平成28年特定商取引法の改正についてからダウンロードできるチラシ【訪問購入のトラブルに注意してください!】をプリントアウトし、「査定だけならいいけど、買取とかの話になったらいったん断って。それかこのチェックリストだけでも現場で確認して」と申し含める
- 結果的には私も立ち会えたことがよかったのか、本人がある程度警戒心を見せていたのがよかったのか、着物の査定のみで強引な買取や貴金属の押し買いには至らなかった

箇条書き中にもリンクしていますが、消費者庁が出しているチラシ【訪問購入のトラブルに注意してください!】はよく作られているので、高齢の家族がいる方にはぜひ一読いただきたいと思います。
他にも国民生活センター – 不用品を買い取ると言ったのに貴金属を買い取られた!!-終活の一環!?高齢者を中心に訪問購入のトラブルが発生しています-から同様の啓発リーフレットが公開されていますが、こちらはチェックリストなどはないので個人的には消費者庁の物の方がお勧めです。
また、「呼んでいないのに業者が来たとき」や「強引に品物を買い取られたとき」は消費者ホットライン「局番なしの188(いやや)」に電話しましょう。土日祝日も含めて消費生活相談窓口に繋がります。
今回の事例では悪徳事業者とは言い切れない
さて、ここからは細かい話になっていきますが、今回の事例では事業者側も特に特定商取引法などに触れる行為は行っていません。
それは何故なのか?を解説しているページである特定商取引法ガイド – 訪問購入や、事業者向けリーフレット「ご存知ですか?訪問購入のルール」および消費者向けリーフレット「訪問購入にはルールがあります」を見てみましょう。
事前に品目を指定した上でアポを取って査定に来ることは問題ない
今回の事例は、最初は「贈答品」という話から、こちら側の発言により着物の査定となりました。
これが「贈答品の査定をしたい」とだけ言われていて、いざ訪問を受けたら「他に着物や貴金属などありませんか?」という流れになったなら「不招請勧誘の禁止(法第58条の6第1項)」に触れる可能性があります。
もちろん、事前のアポもなくいきなりインターフォンが鳴って訪問を受けた(飛び込み勧誘)という場合は、こちら側は「訪問購入に係る売買契約の締結についての勧誘の要請をしていない」ので、不招請勧誘にあたります。
事前に買取の要請をしていた場合は買取行為は問題ない
今回の事例は、正確なやり取りまでは確認していませんが、事前のアポイントメントの段階で「着物だったら値段次第で買い取ってもらいたい」という意思を示していたようです。
そのため、結果的には買取には至りませんでしたが、今回の事例では着物の査定から買取という流れになっても問題はありません。
ただし、アポの際に「査定のみ」という話になっていて、実際の訪問時に業者側から「買取の勧誘」をすることは同じく「不招請勧誘の禁止(法第58条の6第1項)」に触れる可能性があります。
ただし、こちらは先ほどの飛び込み勧誘のパターンと違い、「お客様が買取を望まれた」とされてしまう場合もあるので、言った言わないの話になる可能性もあります。
買取の話になるときは、書面を交付しなければならない
今回の事例は買取には至りませんでしたが、買取の際には法定事項が記載された書面を交付しなければなりません。
特定商取引法ガイド – 訪問購入の「書面の交付(法第58条の7、法第58条の8)」には次のように書かれています。
- 物品の種類
- 物品の購入価格
- 代金の支払時期、方法
- 物品の引渡時期、方法
- 契約の申込みの撤回(契約の解除)に関する事項
- 物品の引渡しの拒絶(法第58条の15)に関する事項
- 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名
- 契約の申込み又は締結を担当した者の氏名
- 契約の申込み又は締結の年月日
- 物品名
- 物品の特徴
- 物品又はその附属品に商標、製造者名若しくは販売者名の記載があるとき又は型式があるときは、当該商標、製造者名若しくは販売者名又は型式
- 契約の解除に関する定めがあるときには、その内容
- そのほか特約があるときには、その内容
もし、買取にあたって法定事項の書面の交付を拒むような態度を見せた場合には、毅然と断るようにしましょう。
物品の引渡しを拒むことができる旨を告知しなければならない
今回の事例は買取には至りませんでしたが、買取の際には「物品の引渡しを拒むことができる」ということを告知しなければなりません。
物品の引渡しの拒絶に関する告知(法第58条の9)として、「事業者は、クーリング・オフ期間内に売買契約の相手方から直接物品の引渡しを受ける時は、相手方に対して当該物品の引渡しを拒むことができる旨を告げなければなりません。」とあります。
先ほどの法定事項の書面にも「契約の申込みの撤回(契約の解除)に関する事項」「物品の引渡しの拒絶(法第58条の15)に関する事項」とありましたが、「クーリング・オフ期間内(書面交付から8日以内)ならば事業者に対して物品の引き渡しを拒むことができる」点は書面だけでなく「告知」も行う必要があります。
買取のフェーズに至らなかったので書面は確認していませんが、アポの品目と査定のみという内容に齟齬はなかったので、悪徳事業者とは断定できませんでした。
電話番号で検索したら悪評の口コミが多いので、優良事業者とも断定できませんが……
「古物商許可証」「行商従業者証」をチェックする手段もある
特定商取引法ガイド – 訪問購入には書いてありませんが、訪問購入を行う事業者にはもう一つ義務付けられているものがあります。
特定商取引法ではなく古物営業法の第11条に「古物商は、行商をし、又は競り売りをするときは、許可証を携帯していなければならない」、同第2項に「古物商は、その代理人、使用人その他の従業者(以下「代理人等」という。)に行商をさせるときは、当該代理人等に、国家公安委員会規則で定める様式の行商従業者証を携帯させなければならない」とあります。
事業者の訪問を受けた際に、査定や買取の話に入る前に「古物商許可証か行商従業者証を見せてくれないか」と釘を刺すのも良いかもしれません。
もし「許可証や従業者証を忘れた」といった場合は、その時点で古物営業はできませんので、お引き取りいただくようにしましょう。それでも商談を続けようとする場合は先ほどの「188」か、最寄りの警察署の生活安全課に電話するようにしましょう。
「古物商一覧」に掲載されていなくても、即「無許可業者」と判断してはいけない
先ほど「電話番号で検索したら悪評の口コミが多い」と書きましたが、その口コミの中に「インターネットで古物商一覧を検索したけど載っていなかった!無許可業者です!」というものがありました。
しかし、古物商の一覧の公開は各都道府県で運用が異なるようで、全ての古物商について公開している場合もあれば、「インターネット上で非対面により古物売買を行う古物商」のみ公開している場合もあります。
これは、インターネットを用いずに対面のみで古物売買を行う場合の公開は特に古物営業法で義務付けられているわけではないからです(第八条の二では「公安委員会は、第五条第一項第六号に規定する方法を用いる古物商について、次に掲げる事項を電気通信回線に接続して行う自動公衆送信により公衆の閲覧に供するものとする。」と、インターネットを用いる場合の古物商について義務付けています)。
なお、対面で古物売買を行う場合も第十二条で「公衆の見やすい場所に、国家公安委員会規則で定める様式の標識を掲示しなければならない」とされているため、インターネットではなく売買の現場では、必ず消費者から確認できるようにしておかなければなりません。
この点だけは注意しておかないと、「おたくの会社名(や許可証番号)がネットに載っていなかったから無許可だろう!」と食ってかかってしまい、「聞きかじりで言っているな」と思われてしまいかねません。
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